2016/09/30発行 2016 FALL掲載記事

ビジネスインタビュー

常にお客さまの期待を超える

ザ・キタノホテル ニューヨーク支配人 Zack Zahran


1973年の創業以来、ザ・キタノホテルニューヨーク(以下、キタノ)は日系ホテルとしてニューヨークで、その質の高いサービスが評価され続けてきた。今回は支配人のザック・ザランさんに、近年のホテル、ホスピタリティー業界の動向と、その中でのキタノの立ち位置、どんなサービスや特徴を打ち出しているかなどについて聞いた。

――まず、キタノの支配人となるまでの経歴を教えてください。

 私は、大学でホテル学を学んだ後、ザ・ペニンシュラ・ニューヨークに入社し、レジデントマネジャーを長年務めました。そこではゲストサービスの向上、結束の強いチーム作りの方法などを学び、系列ホテルのあるアジア各国も頻繁に訪れ、日本のホスピタリティーにも触れる機会がありました。ヘルムズリー・ホテルに移り、二つのホテルで支配人を務めた後、ボストンのコンサルタント会社を経て、2014年12月からキタノで働くことになりました。

 キタノで働くにあたり、オーナーと会いました。もともとアジアのホスピタリティーのファンでしたし、キタノのサービスに対する哲学もよく理解できたので、キタノの伝統を受け継いでいくことに大変興味を覚えました。そして何よりも素晴らしいチームがあることに引かれました。

――アジア各国を頻繁に訪れたとおっしゃいましたが、アメリカとのサービスの質にはどんな違いを感じましたか?

 ザ・ペニンシュラ時代、ザ・ペニンシュラ東京オープンのプロジェクトにも携わり、日本を何度も訪れました。日本をはじめ、アジア各国のホスピタリティーの特徴は、お客さまへの誠実さ、丁寧さ、敬う気持ちを、サービスを提供する一人一人がよく理解し、実践していることだと感じました。伝統のあるホテルは特にそうで、私自身も、とても心地よく過ごすことができました。

 ホスピタリティーの根幹は当然ながらサービスの質です。ですからアジア資本のホテルのニューヨーク進出が顕著になり始めたときは、アジアのサービスの素晴らしさを知っていたので、強力な競争相手になると感じましたし、われわれも、より質の高いサービスの充実を図らないと競争できなくなると感じました。

――現在のホテル、ホスピタリティー業界のトレンドを教えてください。

 テクノロジーの進歩は、あらゆる業界に影響を与えていますが、ホテル、ホスピタリティー業界も同様です。特に若い層の旅行者は、情報を探すのも、ホテルを決めるのも専門サイトでレビューを見て、さらにはスマホでチェックイン、チェックアウトもするといった具合です。現代のホテルではそれに対応できる高速のワイファイを用意することは必須です。ソーシャルメディアも言わずもがな大事なマーケティングツールです。お客さまのニーズを知ることはもちろん、新しいサービスを始めた際に情報を発信するメディアとして、もはや欠かすことはできません。

 サービスにおいては、最近の傾向として、大手ホテルグループの画一的なものではなく、親切で、丁寧で、親しみを感じられるサービスが求められていると捉えています。例えば、お客さまの名前を覚えて呼ぶことで、一人一人を丁寧にケアしていることが伝わるような接客ですね。大きなチェーンでは、一人一人を特別に扱うことは難しいので、われわれのような小規模のブティックホテルが、このトレンドにおいては席巻しているといえます。

 現代人の健康志向も見逃せない要素です。そのため、お客さまはホテルにスパやマッサージなどのサービスを求める傾向が強いです。こうした要望に対しては、キタノではベッドのマットレスに日本製の「エアウィーヴ」を取り入れた客室を用意しています。適度な反発力のある素材を使っているため、より質の高い睡眠をとることができます。睡眠はもちろん健康の第一歩ですし、ホテルでの睡眠が、ニューヨーク滞在中の体調や活動に良い影響を与えます。

 もう一つ、「ホテルレストラン」がホスピタリティー業界の最近の大きなトレンドです。これまでは、シンプルな朝食を提供するのがホテルレストランの目的でしたが、特に、ニューヨークでは、ホテル内に本格的なレストランがあることが求められるようになっています。キタノの場合は、「ジャズ・アット・キタノ」で日本的な朝食、そしてジャズ演奏を楽しみながらの夕食を提供していますし、「白梅」では、料理長、佐藤幸弘による本格和食を楽しんでいただけます。ホテルレストランは、スターシェフが手掛けるものも多く、このトレンドは今後も続くでしょう。

――キタノはリピート客が非常に多いと聞きました。そのためにどのような工夫をしていますか?

 われわれはチームとして一つの概念を共有していることが強さです。「常にお客さまの期待を超える」ことを哲学として持っています。そのためには、一つ一つのことの細部にまで目を配るということを徹底しています。お客さまを満足させるために、スタッフの一人一人がお客さまの到着前から準備し、チェックアウトされるまでケアするという意識をきちんと持っています。常にサービスとは何か、を考えるようにも指導しています。

 先月、昨年に訪れたお客さまが、戻られるたびに必ず何かが良くなっていると感じられるように心掛けています。

 フロントスタッフが心からの笑顔でお客さまをお迎えし、ベルマンが最初に会うスタッフとしてお客さまを部屋へ案内いたします。もちろん、お客さまが到着した時には、ハウスキーピングチーム、エンジニアチームが部屋を確認し終わっていて、完璧な状態に整えています。お客さまがホテルに着いた瞬間から「キタノ・エクスペリエンス」が始まっています。

グランドセントラル駅からほど近い、ミッドタウンの絶好のロケーションに建つザ・キタノホテル ニューヨーク。セレブリティー、エグゼクティブの宿泊客も多い。
客室には、日本の空調システム、PMACを設置。寝具にエアウィーヴを採用するなど、日本の技術も多く取り入れている。エアウィーヴは常設の部屋以外でも、リクエストがあればセットが可能
ザランさんは、質の高いサービスはチームの不断の努力で成し遂げられると語る。「お客さまが次回いらしたときに、新しい発見、驚きがあるように心掛けています」という

Zack Zahran

大学卒業後、ザ・ペニンシュラグループに入社。その後、ゴードン・ラムゼイを経て、ヘルムズリー・パーク・レーン・ホテル、ザ・ニューヨーク・ヘルムズリーで支配人を務めた。2014年12月にザ・キタノホテル ニューヨークの支配人に就任。

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