2017/06/30発行 2017 SUMMER掲載記事

ビジネスインタビュー

キユーピーマヨを  米国家庭で一家に一本

「Q&Bフーズ」エグゼクティブ・バイスプレジデント 長瀬伸二


 昨年5月から、米国で製造したキユーピーブランドのマヨネーズの販売が開始した。米国法人設立から35年。日本人にとってはおなじみのマヨネーズは、米国でどのような変遷をたどってきたのか。現在の米国市場に向けての戦略も交え、キユーピーの米国法人、「Q&Bフーズ」エグゼクティブ・バイスプレジデントの長瀬伸二さんに聞いた。

キユーピーブランドで
マヨネーズ市販を開始
 

――米国で製造したマヨネーズを「キユーピーブランド」として初めて市販したのが昨年5月と聞いて驚きました。なぜこのタイミングだったのでしょうか?

 1982年にロサンゼルスに米国法人を設立して以来、米国でのマヨネーズの製造はしてきましたが、販売は業務用のみでした。市販用としてのキユーピーマヨネーズの販売は今回初めてです。

 現在、日本の多くの食品会社が、日本市場での消費が頭打ちとなっていることから、海外市場へ打って出る戦略を持っています。弊社は、米国法人の設立が一番最初でしたが、その後、タイ、中国、マレーシア、ベトナム、インドネシアと展開して行き、特に、中国は弊社が取る海外展開で、一つの柱といえるものになりました。

 今回のキユーピーブランドのマヨネーズの、一般消費者への販売の開始は、こうした展開の中で、かねてより進出している米国とその市場の大きさに着目し、戦略のもう一本の柱にしていこう、という考えが根本にはあります。

――海外進出は米国が先でしたが、中国での市場の成長の方が早かったということですね。米国市場と中国市場の違いはどんなところにありますか?

 創業者の中島董一郎は、大正初期に2年間の海外留学をし、英国でオレンジマーマレードに、米国でマヨネーズに出合い、「こんなおいしいものがあったのか」と感激してキユーピーを創業しました。つまりマヨネーズは米国に教えてもらったものです。

 米国市場は、言わずもがな、マヨネーズ・ドレッシングの成熟市場ですから、その市場に参入する難しさはあります。一方で、中国では、現在のようなスーパーマーケットもほとんどない時期に、中国全土の大都市50都市に配荷し、先行者メリットを享受できました。

 市場規模の大きさは双方で似ていますが、根本的には全く異なる市場だといえます。

米国法人設立の当初は
3人で調達、製造、販売
 

――当初、無糖の緑茶、お茶のドリンクという市場がなかったわけですよね?

 そうです。実は私は16歳で米国に留学した時、ティーバッグで作った緑茶を友達に飲ませてみたことがありました。そのときは「苦い」と吐き出されました。19歳の時にもハワイでサンプルを飲んでもらったのですが、やはり苦いと。「飲み物は砂糖を入れれば入れるほど売れる」といわれていたぐらいですから、リサーチオフィスを作ってから1、2年も同じ反応で、無糖など見向きもされませんでした。

――米国法人設立以降、どのような事業展開をされたのですか?

 米国法人「Q&Bフーズ」はキユーピー初の海外法人として設立しました。当初は、現地で材料を調達し、日本から持ち込んだ機械を使ってマヨネーズを作り、日本食レストランに販売いたしました。

 当時は、今のように日本食レストランの数はありませんでした。私も営業に同行して店を周りましたが、当時から、日本製マヨネーズをお使いいただいており、米国製は全く売れませんでした。当時は、原料の調達、製造、販売を3人でやっていました。

――そのご苦労を経て、どのように事業を展開されていったのでしょうか?

業務用マヨネーズは、日系のお客さま向けに、ニーズに合わせながら順調に販売を伸ばし、一定の評価をいただいております。

 しかしながら、一般米国市場向けは、ブランド認知度も十分でなく、一旦、キユーピーブランドでの商品展開を見合わせ、コパックという他社の製品を製造する事業に特化し、米国のマヨネーズ・ドレッシングの市場を学んでまいりました。

 近年、先ほどお話ししたように、中国は一つの柱となっていますが、もう一つの柱として、再び米国市場でのキユーピーブランド展開に再挑戦しております。

キユーピーブランドで
米国一般市場に再挑戦
 

――キユーピーブランドのドレッシングも販売されていますが、米国のドレッシング市場での戦略はどのようなものですか?

 ドレッシングは、数多くの種類があります。しかし、大手「Hidden Valley Ranch」「Wishbone」といったメジャーと戦うことは、容易なことではありません。

 そこで、オーガニック、「NON GMO」といった原料にこだわった製品として、一般市場に再挑戦しております。

――マヨネーズの今後の展望は?

 ドレッシングに比べ、マヨネーズは特徴を伝えるのが難しい商品です。

 キユーピーマヨネーズは卵黄だけを使っている点は、アメリカのものと違いますし、その味を気に入って料理に使っていただいているシェフも数多くいらっしゃいます。

 ですがそれだけでは、食品のディストリビューターは説得できません。「何で今さらマヨネーズ」と捉えられてしまいます。さらに言えば、米国人にとって、マヨネーズの味は、食べ慣れている、例えば「BestFoods」のマヨネーズの味なわけです。そこを理解して展開していく必要がありますね。

 もちろん理想としては、時間をかけてでも、米国でもキユーピーブランドのマヨネーズを一家に一本という形で愛されるものにしたいと考えております。

 ただ米国製造のキユーピーブランドの製品は市販を始めたばかり。日本でも100年近い歴史があります。米国でもこれから10年、20年はかかるとみています。

 利益だけを考えれば他のやり方があるかもしれませんが、「キユーピー」というブランドへのこだわりがありますから、じっくりとやっていく覚悟です。

“時間をかけて 愛されるものに”

昨年5月から市販されている米国製造の「キユーピーマヨネーズ」(写真左)。米国製造のキユーピーブランドのドレッシング5種類の中でも一番人気の「DeepRoastedSesame」(写真中)、新商品の「RoastedGarlic Onion」(写真右)はドレッシングとしてだけでなく、ソテーソースやステーキソースとして使うことも推奨している

長瀬伸二 Shinji Nagase

東京生まれ。法政大学工学部卒。1980年キユーピー株式会社入社。伊丹工場勤務を経て、86年キユーピー米国法人「Q&BFOODS,INC.」赴任。本社海外事業部などを経て2001年、中国法人社長。15年から現職。

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