2017/06/30発行 2017 SUMMER掲載記事

堀古英司の経済ミラクルキャッチ!

第五回 トランプ相場は小休止か 大統領就任から半年の今

S&P500指数は 
就任時から14%上昇

ドナルド・トランプ氏が大統領選挙で勝利して以来、アメリカの代表的株価指数であるS&P500指数は6月半ば時点で14%の上昇となっています。この間、トランプ大統領は特に目立った政策を実行したわけではありません。

 就任直後大統領令の連発はあったものの、公約であったオバマケア(医療保険制度改革法)の見直しや税制改革、インフラ投資などの経済政策は予算を伴うため議会の承認が必要で、少なくとも議会が休会となる8月までに成立する可能性はほぼゼロという状況になってきています。

株式市場の上昇
「期待」が要因

 要するに、トランプ氏が大統領で勝利してからの株式相場の上昇は、もっぱら「期待」によるものだったということが分かります。

 株式というのは将来を先取りするものですので、期待によって上下するのは当然のことなのですが、その期待自体が変わってくると、それに応じて株式相場も反応するものです。

 トランプ氏が大統領選挙で勝利しただけでなく、共和党が  議会上下院で過半数を取ったことで、2017年中に税制改革が実施されるとの期待が高まりました。2017年中に法案が成立すれば2017年1月にさかのぼって適用される可能性が高く、今年は個人も企業も、既にそのような状況を前提に経済活動を営んでいると思います。

税制改革法案は
年内成立が低い

 しかし今年も半分近くが過ぎたことで、今後「もしかしたら今年中に法案が成立しないかもしれない」と感じる個人や企業が増えてきてもおかしくありません。そして現在の政治情勢を見ていると、今年中に税制改革法案が成立する可能性は日に日に下がってきているように見えます。

 そうなると個人も企業も、経済活動を控えたり、先延ばしにしたりしなければなりません。実際5月半ばから、先行性の高い経済指標を中心にやや陰りが見えてきており、既に個人や企業は税制改革法案が今年中に成立しない可能性を見据えて、経済活動をスローダウンし始めている兆しが見えます。

金利上昇期待の変化
低下で「トランプ相場」終了

 金利の市場では、トランプ氏の大統領選挙勝利後、米10年物国債利回りは1・8%から一時2・6%にまで上昇しました。そしてこの金利の上昇によって株式市場では銀行株が上昇し、トランプ相場のリード的役割を果たしてきました。銀行というのは基本的に、短期で資金を調達して長期で運用するビジネスをしています。またデフレ環境の下では銀行の保有している資産価値が減少する一方で、負債の価値は実質的上昇しますので、長期金利が上昇するような環境というのは銀行にとって望ましいビジネス環境なのです。

 しかしトランプ政権の経済政策に対する期待が変化し、今後金利が上昇しない、ないし低下してくると、銀行株も下落を余儀なくされます。トランプ相場のリード役だった銀行株が下落することになれば、大統領選挙以来のトランプ相場は一旦終了ということになります。

急激上昇は調整
望ましい相場に

 ただ私は、トランプ政権の経済政策が先延ばしになることによる株式相場の調整や、経済活動の鈍化は、むしろ望ましいことと考えています。というのは第一に、そもそもこれまで7カ月で14%も株式相場が上昇するというのはペースが速く、遅かれ早かれいずれ必ず調整は起こるものだということ。

 第二に、大統領選挙後の1年間で20%以上株式相場が上昇して、4年後の選挙で勝利した大統領(又は同党の候補)はいません。再選されようと思えば、最初は少しずつ、そして3〜4年目の選挙に向けて経済や株式相場を上向かせていくのが望ましいのです。

 第三に、トランプ政権の一連の経済政策成立は単に時間の問題であり、今年議会を通らなくても、来年通ることはほぼ確実です。

 大統領選挙後続いた株式相場の上昇は目先、小休止する可能性はありますが、それはむしろ必要かつ望ましい調整と捉えるのが自然だと思います。

堀古英司

堀古英司
■ニューヨークに拠点を置く投資顧問会社、ホリコ・キャピタル・マネジメントLLC最高運用責任者。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」をはじめ、メディアに多数出演。著書に「リスクを取らないリスク」。関西学院大学時代、アメフト部で活躍。

【トランプ大統領の税制改革】

トランプ大統領は、企業、個人への大型減税を行うことで、消費を促し、経済成長を3%に高め、財政収支を今後10年間で黒字に転換させることを目指す税制改革案を、今年4月に発表した。

同案では、連邦法人税率の現在の35%から15%への引き下げ、個人所得税の7段階に分かれていた個人税率区分の3段階への簡素化、最高税率を39.6%から35%への引き下げを求めたものの、具体的な概要は示されていない。

現在、共和党、民主党が税制改革法案の協議を進めているが、下院共和党が、トランプ氏が15%とした連邦法人税を20%とする素案を提出している他、トランプ氏が現時点では盛り込まなかった国境税などに関しての議論も続いている。  また審議に入るのは9月以降とされているため、年内での成立は不可能だとされている。

【トランプ大統領のオバマケア改廃法案】

医療保険制度改革(オバマケア)改廃法案には下院で5月に可決したが、上院共和党が反発し、独自の法案を作成している。

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