2017/09/29発行 2017 FALL掲載記事

ビジネスインタビュー

信頼を勝ち取る ブランド戦略

興和ヘルスケア・アメリカ最高執行責任者 松野下恭弘


 日本では興和株式会社の外用消炎鎮痛薬やサポーターのブランドとして、「バンテリン」の名は誰もが知っている。米国ではまだ一般的ではない「バンテリン」ブランドの認知度や製品への信頼度をいかにして上げるか、また当地での医薬品開発の難しさについて、興和ヘルスケア・アメリカ最高執行責任者の松野下恭弘さんに聞いた。

――興和のさまざまなヘルスケア製品のうち、米国市場では、われわれ日本人にとってもなじみのある外用消炎鎮痛薬の「バンテリン」ブランドシリーズのサポーターが販売されています。

 バンテリンは日本では今年で25周年を迎えました。まず塗布剤の発売から貼付剤へと展開し、痛みに対するOTC医薬品ブランドとして確立してきました。その後、痛みや疲れの緩和に補助的に用いるサポーターをそろえることに意義があると考えました。新たにサポーターがブランドラインアップに加わったことで、日常生活でのトータルな「痛み」対策ブランドとなりました。

 対して米国では、薬品への規制や許可のプロセスが異なり、日本のバンテリンで使用している成分についても許可取得に非常に時間がかかります。そこで、バンテリンサポーターから展開を開始しました。

 従来の一般的なサポーターは保温が主目的であったり、圧迫固定をするものも多いですが、バンテリンサポーターは日常生活のサポートを目的とする「生活テーピング理論」に基づき設計しました。生活テーピングとは、スポーツ選手の行う固定度の高いテーピングとは異なり、可動域の制限を20~30%とし、階段の上り下りやけんしょう炎の時の手首の痛みなどに用いられるテーピング技術です。日常の中で誰でも簡単にテーピング効果を体感できる「着るテーピング」を目指しています。数種類の糸をさまざまなパターンの編み方で組み合わせ、立体的でシームレスな編み上げに成功しました。膝、肘、手首、足首、腰、ふくらはぎ用と種類も多く、消費者の方のニーズに合わせ選べるようになっています。

――製品の開発以外では、どんなことに取り組んでいらっしゃいますか?

 北米市場で広く展開していくには、質の高い製品としてのブランド認知度を上げることはもちろん、お客さまにきちんと製品が届くように物流・販売ルートを確立させることが大切と考え、現在取り組んでいるところです。またブランド戦略の一貫として、バンテリンサポーターはメジャーリーグベースボール(MLB)とライセンス契約をして、現在ニューヨークヤンキースはじめ数球団のロゴデザインが入った商品を展開しています。まずブランドを知ってもらうこと、そして、ヤンキースのような人気球団のロゴがあれば売れるという訳ではありませんが、MLBが認めた製品とブランドであると証明として、信頼性を高めることができると考えました。

――海外で展開する難しさは?

 会社全体として、海外展開で現在最も注力しているのは、市場規模の大きいアジアです。中国、韓国などでは、日本と同じ商品を販売していて、ブランド認知度も高いです。ただ、目標としているのは、全世界での「バンテリン」ブランドの認知度を上げることです。そのためには市場規模ももちろん重要ですが、グローバル認知度への影響力が強い、北米と欧州の市場で積極的に展開していくことが、目標達成の上では一番近道なのではないかと考えています。

――北米市場での展開をお聞かせください。

 アメリカでは、「興和」「バンテリン」と言っても、まだまだ知られていないので、まず信頼度を上げていくことが大事です。一つは、良い製品を出す。本当に製品そのものが良くなければ、いくら日本で認知されているといっても通用しません。買ってもらうには、製品の良さを理解してもらうしかありません。

 日系企業の方だと「興和」「バンテリン」をある程度ご存知なので、信頼して製品を取り扱っていただける。当初は米系大手ドラッグストア中心の導入を考えましたが、せっかく日本で培ったブランド力を活用し、認知と信頼が既にあるアジアマーケットでまず展開を広げています。「アメリカにもバンテリンがあるんだ」と皆さんに認識していただくことも大切です。

 アメリカのドラッグストアへの展開は、名前よりも商品の良さで取り扱ってもらえるところからアプローチしています。今後、商談と製品知識の普及を重ね、製品の良さを理解して頂ける企業に展開を広げる予定です。

――北米市場で気を付けている点は?

 日本では、バンテリンについて多くの方に既に知っていただいているので、オンラインでも信頼して購入していただけますが、アメリカではまだ、オンライン中心の商売では製品の良さを伝えきれないと考えています。だから、店頭で手に取って、良さを知ってもらった上で買っていただきたい。そのために、営業部員がきちんと説明にあがって、納得した上で店頭に置いていただきたいと考えています。

――次に松野下さんのお仕事について聞かせてください。

 入社以降、東京で25年ほど営業職に就いたのち、営業本部で管理職を務め、昨年4月にロサンゼルスに赴任になりました。実は初めての海外勤務です。

――もともと海外で働きたいというご希望はありましたか?

 働きたいというよりは、「海外に出なければならない」という使命感がありました。

 現在アジアでの市場開拓は進んでいますが、北米ももっと力を入れて取り組まなくてはいけないとずっと考えていました。それで米国の赴任になったので、よかったと思っています。

――使命感というのは?

 30代後半ぐらいから、ずっと感じていたことです。今の時代は時の流れが速い。例えば30年前の5年というスパンと、今の5年では全然時の流れ方が違うと感じますし、これからさらに早くなっていくと思います。だから何かしなくては、私自身、取り残されてしまうんじゃないかと思っていたわけです。

 日本でも大きな市場はありますが、これから人口が減りますし、少しずつ規模が小さくなっていくと思いますので、海外に出ないといけないと。

 もしかしたら、もっと早ければよかったのではないかとも思いますが、今からでも遅くないと思います。

 まずはバンテリンをアメリカで流通・確立させて、次は弊社が持っている胃腸薬、風邪薬、ビタミン剤、ハンドクリームなどを展開していきたいと思っています。

9月末発売となる「バンテリン(Vantelin)」ブランドの外用消炎鎮痛剤(写真右)。リキッドタイプ、クリームタイプ、ジェルタイプがそろう。すでに販売しているサポーター(同左)と共に、トータルな関節、筋肉の痛み対策ブランドとして展開

海外に出なければという 使命感がある

松野下恭弘 Yasuhiro Matsunoshita

愛知県名古屋市出身。帝京大学薬学部卒業後、1992年に株式会社興和新薬に入社。同社東京支店で営業職、本部で管理職を経て2016年12月からKowa Health Care America, Inc. COOに就任。

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