2018/01/05発行 2018 WINTER掲載記事

堀古英司の経済ミラクルキャッチ!

第七回 30年ぶりの税制大改革 メリットはどこに?

 トランプ政権にとって経済政策の最大の目玉であった税制改革は、紆余(うよ)曲折を経ながらも、2017年内に成立するに至りました。これによって30年ぶりと言われる税制の大改革のほとんどが、2018年1月から実施されることになります。

 法案成立前後からメディアを中心に、今回の税制改革によって「誰がメリットを受けるのか」「誰が損をするのか」という議論が盛んになっています。まず個人は、所得水準・内訳、住む地域、家族構成、職種などさまざまな要因によって、受けるメリットの度合いも異なりますし、多くの人が減税となる中、逆に増税となる人もいます。

ニューヨークでは
住民に不利な税制

 QUAの読者の多くはニューヨークにお住まいだと思いますが、残念ながら、ニューヨークのように州税・地方税が高い地域に住む人は相対的に不利な税制改革となっています。それは、これまで連邦所得税を算出する上で項目別控除の対象となっていた州税・地方税が、2018年からは固定資産税と合わせて1万ドルまでしか控除できなくなるためです。

 州税・地方税の高い地域は相対的に民主党支持層が多いですから、共和党が作り上げた今回の税制改革法案では狙い撃ちにされた感がありますね。このように個別では「誰が得をして誰が損をした」というのはありますが、その多くが2025年には失効することになっており、全体で見れば、金額的には実は大したことはありません。それでは今回、1・5兆ドル規模となる税制改革の、最大の目的は何だったのでしょうか。それは1・5兆ドルのうち約9割にあたる、1・35兆ドルを占めている法人税減税です。

 チャートをご覧いただいて明らかなように、特に金融危機以降、先進各国はじわじわと法人税率を下げてきています。財政赤字が世界最大の日本でさえ、今や法人税率は30%をやや下回る水準にまで下げてきています。このような中、アメリカの法人税率は、連邦、地方を合わせて長く40%近くと、先進国で最高の状態が続いてきました。

海外移転招いた
高水準の法人税

 オバマ大統領は、上品さという点では、間違いなく歴代でトップクラスの大統領だったと思います。しかし2012年の大統領選挙を含め、折に触れて法人税減税を公約に挙げながら、実行してこなかった責任は重いと思います。

 法人税率が先進国間で最高水準に据え置かれたことによって、米国企業は海外でビジネスをするようになり、外国企業は米国でのビジネスを避けるようになるのは当然の事です。この結果アメリカの職は海外に奪われ、アメリカの消費者は海外の物を買わざるを得ないので、貿易赤字が増えるのも当たり前です。景気が思うように回復しないので、経済政策は中央銀行による金融緩和に頼らざるを得なくなっていたのです。目先の法人税収入に目を奪われ、実際には非常に多くの、大きな物を失っていたことは認識しておくべきでしょう。

職が戻り経済強化
貿易赤字が減少

 今回、連邦法人税率が35%から21%に引き下げられたことを受けて、アメリカの法人税率は一転、先進国で最低に近い水準となります。しかも恒久減税ですので、外国の経営者は中長期の観点からアメリカにビジネス拠点を、と考え、アメリカから拠点を移していた経営者は、アメリカに拠点を戻そうという考えになるでしょう。

 アメリカに職が戻り、アメリカ国内の物が買えるようになるので、貿易赤字は減少するでしょう。景気が回復すると中央銀行の過度な金融緩和に頼らなくてよくなるので、金利は正常化していくでしょう。法人税率低下は金持ちや企業を儲けさせるだけ、という意見がありますが、私はアメリカ経済を根本的に強くするための、ど真ん中の政策だと考えています。

メリット受けるには
株式への投資が近道

 さてそれでは、このメリットを取ろうと思えば、皆さんはどのような行動を取ればよいのでしょうか。それは株式に投資することです。法人税率引き下げのメリットは株主に行くのですから、株式に投資しておくことが最もメリットを得る近道だということです。結局の所、今回の税制改革は「リスクを取った人にご褒美を」という資本主義の基本となる政策であり、その機会は幅広い層に提供されているものであることを忘れてはなりません。

堀古英司

堀古英司
■ニューヨークに拠点を置く投資顧問会社、ホリコ・キャピタル・マネジメントLLC最高運用責任者。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」をはじめ、メディアに多数出演。著書に「リスクを取らないリスク」。関西学院大学時代、アメフト部で活躍。

【税制改革法案の可決】

税制改革法案が上下院で採択され、トランプ大統領が署名し成立した。柱となる法人税の減税は、現行の35%から21%へ引き下げられる。この水準は先進国の法人税の中でも低いものとなる。また大幅な減税により、今後10年で連邦政府の歳入は約1兆5000億ドルの減収となると推測される。米国での大規模の減税は30年ぶり。

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