2018/06/29発行 2018 SUMMER掲載記事

ビジネスインタビュー

新しいチャンネル使い ラーメン文化を広げる

サン・ヌードル・バイスプレジデント・オブ・オペーレション 夘木健士郎


アメリカのラーメンブームの土台を支えている麺を開発、製造、販売するサン・ヌードル(1981年にハワイで創業)。同社のニュージャージー工場を統括する夘木(うき)健士郎さんに今後の展望を聞いた。

――夘木さんのお仕事について教えてください。

サン・ヌードルの工場は、ハワイ、ロサンゼルスとニュージャージにありますが、ここは2011年に立ち上げました。私は立ち上げ時から責任者として、こちらに赴任し、以来、工場と東海岸を統括する責任者を務めています。

現在の職務として力を入れているのは、次のステップに向けての新たな取り組みを考えることです。例えば、お客さんであるラーメン店と一緒に新たなチャレンジをしたり、一方でホールフーズでは家庭用に生麺のラーメンキットを販売したり、新しいディストリビューションのチャンネルを探すなどしています。4年前からヨーロッパにも進出し、最近はそちら方面への出張も多いですね。

現在パリには何十軒もラーメン店がありますし、ベルギーにはラーメンのチェーン店もあります。他にもイギリス、スイス、ポルトガル、オランダ、イタリアにも弊社の麺を届けています。

――当地では、サン・ヌードルが手掛ける店、「ラーメンラボ」も展開していますね。

2014年に「ラーメンラボ」をマンハッタンに出店した当初の目的は、一般のお客さまに、ラーメン文化を広めることでした。その目的は変わりませんが、取り組みとしては早い段階から、日本、またニューヨーク以外からシェフを招いて、3週間出店してもらう方法をとっています。われわれも知らないラーメンを見出す機会にもなっていますし、こういうスープには、こういう麺が欲しいといった会話も生まれて、麺開発にも役に立っています。またここで試して日本からアメリカに出店したラーメン店もありますから、あらゆる意味でWin−Winになっています。

――家庭用の生麺の販売も、ラーメン文化を一般に広げる発想からですよね。

ラーメン店やラーメンラボに来るシェフと関係を強くして、それぞれの希望に即した麺を提供してきました。そうやって業務用で品質の高い麺を開発、提供できたからこそ、自信を持って一般向けにも販売するという発想が出てきました。

さらに、必要な食材がパッケージになっている、ミールキットを各家庭に配達するブルーエプロンとも提携しました。先日も、うちの生麺を使ったラーメン10万食を都市部だけでなく、ノースダコタ、サウスダコタといったエリアでも取り扱ってもらいました。全米50州で展開しているので、うちの生麺を初めて食べた人が「インスタントと全然違う」とリピートしてくれたり、「もっと食べたいけど、どこで買えるのか?」という問い合わせも直接してくれるようになりました。こうした新しいチャンネルを使って、全米の家庭に生麺のラーメンを広めたいです。

――都市部とそれ以外の地域ではラーメンに対する認識も違うのですね。

東海岸、西海岸の都市部ではラーメン店もたくさんありますし、ホールフーズでも生麺キットを扱っていますが、都市部以外では、インスタントの乾麺のラーメンしか食べたことがないという人もかなり多い。私たちも次の段階として、それとは違うラーメンがあることを生麺を使って紹介したいと考えていたのですが、どうしても文化を広げるのが難しかった。そんな時、ブルーエプロンのようなサービスが出てきました。こうした新しいチャンネルと提携できたことは大きいですね。

弊社社長は、製麺において、特に生麺を扱う会社としては、トップになるということを目標に掲げています。トップといっても売り上げ、マーケットシェア、ブランドとしての知名度など、いろいろな意味があると思いますが、われわれは品質の高さでトップになりたいと考えています。ただ、われわれはラーメン店ではありません。だから発展していくためには、ラーメン文化を広めラーメン業界をより良くにしていく必要があります。

――これからの取り組みは?

総合的にラーメン文化を底上げしていくことです。サン・ヌードルとしてはオープンマインドで、「ラーメンはこれしかない」ではなく、寿司ならばカリフォルニアロールとか、生魚がダメな人たちでも食べられるものがあるように、ラーメンも、両方のルートを常にオープンマインドで考えます。

また都市部でラーメンが定着してくると、日本人以外のシェフが出てきます。フレンチやイタリアンの料理の背景を持っている人もいて、新しいことにチャレンジするケースも多く出てきます。豚骨ではなく牛骨ラーメンとか、トッピングにも、なじみのない野菜とか食材を使ったり。インテリアもおしゃれで、クールなラーメン店がたくさん出てきています。
ありがたいことに、そうしたシェフがいろいろなアイデアを持ってきてくれて、われわれとも話し合いながら、独自の、ここでしか作れないラーメンを作ろうとしています。そうするとニューヨークに限らず、「ご当地ラーメン」の動きが、もっと出てくるのかなと思います。逆にそういう動きがないと、ラーメン文化が広がらないのではないかとも思っています。

例えば、ノースカロライナでベーシックなしょうゆラーメンに、カマボコ、ノリ、メンマをのせたものを、好んで食べてもらえるかというと、まだまだ難しい。だから五つの要素(麺、スープ、たれ、香り油、トッピング)を基本にしながら、そこにいる人が食べられる材料を使ったラーメンを作る。まず、最初に「食べてもらう」がなければ始まらない。そこの入り口が開けてこそ次のステップとして、日本のラーメンが出せると思います。ニューヨーク、ロサンゼルス、ハワイ、サンフランシスコでは日本のラーメンが当たり前になっていますが、まだラーメン文化のベースがない所には、そういう方法で広げることを考えています。

――「ご当地ラーメン」は面白いですね。

「ご当地ラーメン」をアメリカだけでなく、ヨーロッパ、南米で受け入れられる動きを目指しています。日本でも、東京はしょうゆ、北海道はみそなどがあります。それはその土地にあるもの、近くで取れるものを生かしているわけです。それは、どこでも当てはまるんじゃないかと思うんです。ニューヨーク、カリフォルニア、マイアミのラーメン。それに向けて、ニューヨークのラーメン店しか参加できないラーメンコンテストを10月にやります。テーマはずばり、「ご当地ラーメン」(笑)。ニューヨークのオリジナルとして生まれた方が作り手としてもプライドが持てると思います。

もちろん、シェフのアイデアをネガティブに考えない。よく新しいアイデアに対して、「これはラーメンじゃない」と考える人もいますが、われわれは絶対に、そういう言葉を言わない。そのシェフが「これがニューヨークのラーメン」と思うんだったら、リスペクトしてサポートする立場ですね。

ご当地の味を求めて、アメリカ人は東京、札幌に行くじゃないですか。それと同じように、日本の人たちが、マイアミ、テキサスそれぞれのご当地ラーメンが好きだから本場に食べに行こう、という環境を作りたいんですよね。そうすることでラーメンがただブームではなく、食文化として定着させられると考えています。

――それは楽しみですね。

もう一つは、ヘルシーなラーメンを作ること。日系のスーパーでデモ販売すると、おいしければお客さんは買ってくれる。でもホールフーズなどでアメリカ人に向けて販売すると、「おいしい」とは言ってもらえるけども、塩分とか油とか、原料をすごく細かく見て、自身の健康にそぐわないと思うと買わないという人がすごく多い。

今、健康をコンセプトにしたお店とコラボして、ホウレンソウ入りの麺を開発していたり、違う会社ともコラボして、ファイバーとかプロテインとかが入った麺を開発中です。大事なのは、健康的でおいしいものをつくること。技術的にいろいろな麺は作れますが、おいしくないと意味がないので、そこのバランスですね。

「ご当地ラーメン」 受け入れられる動きを

夘木健士郎 Kenshiro Uki

ハワイ生まれ。ウィットワース大学(ワシントン州)在学中から、父親の夘木栄人氏が創業したサン・ヌードルの事業を手伝い、卒業後に入社。製麺から営業など全ての業務をこなした。2010年に当地に移り、ニュージャージー工場を開設し、現在に至る。

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