2018/06/29発行 2018 SUMMER掲載記事

堀古英司の経済ミラクルキャッチ!

第九回 米国株式 いつまで上がる? どこまで上がる?

「いつまで上がりますか? どこまで上がりますか?」

これは私が長年、投資の仕事をしていて最も多く受けるご質問です。ただ、株式相場の仕組みをつかんでいれば、この質問自体に矛盾があることが分かります。

「いつまでも、
どこまでも」が答え?

というのは、経済が成長していく限りは企業には利益が生まれるもので、基本的にその利益が伸びていく限り、株価は上昇していくものです。また、株式というのはリスクを伴う資産であり、価格が適正である限りは、ハイリスク・ハイリターンという法則が当てはまります。リスクというのは価格変動のことなので、要するに、短期的な価格変動を我慢すれば、長期的に株式相場全体で見れば上昇していくものだということです。

ですので、最初の質問に対する私の答えは、「いつまでも、どこまでも」になってしまいます。

長期での経済成長は
ほとんど右肩上がり

左ページに掲載したチャート①は、過去50年のダウ平均株価を示したものですが、短期的な上下変動はありながらも、長期で見ればほとんど右肩上がりになっていることが分かります。10年間高値を更新していない期間もほとんどありません。やはり、これまでがそうであったように、これからも「いつまでも、どこまでも」ということになるのでしょう。

ただ人間の心理として「早く利益を上げたい」というのがあるのも事実でしょう。人間も生き物でいつ死ぬか分からないし、不確実な将来のお金よりも、確実な目の前のお金の方に興味があるに決まっています。なので、「いつまで上がりますか? どこまで上がりますか?」のご質問はほとんどの場合、この先数年以内のことを指しておられるのだと思います。

短期の成長予測は
簡単ではない

もちろん数年以内の株式相場について「いつまで、どこまで」を予測するのも簡単なことではありませんし、予測したとしても当たるかどうかなど分かりませんから、役に立つものではありません。ただ、数年単位の大きな株式相場の下落局面が近付いている状況を観測するのであれば、不可能ではありませんので一つご紹介しておきたいと思います。

前述の通り、経済が成長していく限りは企業には利益が生まれるもので、基本的にその利益が伸びていく限り、株価は上昇していくものです。

しかし景気にも上下の波があって、経済成長率がマイナスになる時もあります。一般に半年以上経済成長がマイナスになるとリセッションと呼ばれます。そして歴史的には、このリセッションを前後して、株式相場は大きく下落する傾向があります。

景気が悪くなると、企業も個人もお金を使わなくなり、それが悪循環を招いて企業には利益が出なくなります。利益が出ないので株価が下落するのも当たり前と言えば当たり前です。

リセッションのサイン
長短金利の逆転

チャート②はアメリカの10年物国債利回りから3カ月物国債利回りを引いた値を示しています。

通常長期の金利の方が高いですから、この値はプラスになります。しかし時にこの値がマイナスになる、すなわち長期金利よりも短期金利の方が高くなる状況が起こります。これは、今の経済の実力は、こんなに高い短期金利に耐えられませんよ、というシグナルです。また銀行は通常、短期で資金を調達して長期で貸し付けていますが、長短金利が逆転すると逆ザヤになるので、お金が貸せなくなり、経済は弱っていってしまいます。こうしてリセッションに突入していくわけです。

チャート②でも、値がマイナスになってしばらくしてリセッションが訪れていることがお分かりいただけると思います。

ここ数年の前提で「いつまで上がりますか?どこまで上がりますか?」と聞かれると難しいのですが、このサインが出たら、株式投資はしばらく休む方が賢明でしょう。逆に言えば、このサインが出るまでは基本的に買いっ放しで良い、ということになります。

堀古英司

堀古英司
■ニューヨークに拠点を置く投資顧問会社、ホリコ・キャピタル・マネジメントLLC最高運用責任者。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」をはじめ、メディアに多数出演。著書に「リスクを取らないリスク」。関西学院大学時代、アメフト部で活躍。

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