2016/04/29発行 2016 SPRING掲載記事

ビジネスインタビュー

スバル好調を支える アフターサービスの拡充

米国富士重工社長 角 信一郎


 アメリカではスバル車が好調だ。昨年度の販売台数は、前年比13・4%増で、今年に入ってからも躍進が続いている。その大きな要因は、従来からのスバル車ファンのみならず、購入者の層が広がったことが要因だという。スバルの親会社である富士重工、その米国法人、米国富士重工の角信一郎社長に、スバル躍進の裏舞台を聞いた。

――まず、米国富士重工の業務について教えてください。

 米国富士重工業は、日本のマニファクチュアラー(製造業者)の現地機関です。当地での販売や生産をマニフェクチュアラーとしてサポートするのが主な業務で、自動車部門と航空部門があります。

 自動車部門に関連していえば、アフターサービスの統括業務が大きな部分を占めています。その中でも柱となるのは、市場で発生したトラブルやお客さま、ディーラーの抱える困り事に敏速に対応するサービス・品質業務、また、部品を不足なく供給する体制を整える業務です。部品は日本でしか生産していないものもあり、確固たる供給体制が必要なのです。

 さらに販売会社が直接、お客さまに提供するさまざまなサービスの質を向上させるために、スタッフや技術者の指導や教育プログラムの作成なども弊社が行っている業務です。

――近年の米国でのスバル人気を、どのように分析されていますか?

 販売台数が伸びていることについては、購入者の層が広がったことが大きな要因です。購入者の層の幅が広がれば、当然ニーズも多様化することになります。それに対してアフターサービスの質を上げて対応してきたことも、持続的に販売台数を伸ばせている要因になっていると考えています。

――スバルといえば、独自の技術力や性能の高さから、日本、米国のみならず世界中に熱心なファン、「スバリスト」がいますね。

 スバリストの需要として、米国では年間で20万台というのが一つの見方としてあります。おっしゃっていただいたように、これまでスバル自体が技術力を重視して車を開発してきましたが、それだけでは、やはり頭打ちになってしまう。技術力が高いという評価を得つつも、スバリスト以外の購入者からの要望をきちんと拾って、市場の調査もした上で、それを開発の現場にフィードバックすることも、アフターサービスの役割になってきます。

――具体的には、新しい層とはどのような人たちですか?

 これまで、米国市場では、降雪量が多いエリアをターゲットにし、四輪駆動車で、つまりは技術力を全面に押し出して勝負してきました。今、南部、サンベルトといわれるエリアで販売を強化して成功してますが、需要に商品をマッチさせたということがカギでした。

 例えば、米国人は大きい車を好むという、ある意味「灯台下暗し」的な需要があることに気づき、そこに日本では中型車に位置づけられるレガシーのツーリングワゴンを大きくして、「アウトバック」として販売し、ヒットさせました。日本を含め、他国の市場では大型車の位置づけになりますが、米国では一般的に利用する、中型車の位置になるのです。

 そして、もう一つ、独自に開発した技術「アイサイト」といった衝突防止機能などを搭載していることです。過去数年で米国では車の安全性が重視される傾向が強まりました。弊社はそれに先駆けて、独自に安全性を高めてきたことが、時代や購入者のニーズにマッチしたと考えています。

 アメリカでは車を買うとき、安全性に対してお金をかける傾向が生まれてきましたが、逆に言えば安全な商品が出てきたから買うという傾向があったということです。

「スバルだから」の特別視なくし
購入後の満足度を徹底的に向上

 安全性、安定性という目に見える効果を重視することで、特に子供と一緒に車に乗る機会が多い家族層や女性層から支持が得られたことは、確実に販売台数の増加につながっています。その点を重視して、安全性=一緒に乗る人への思いやりというコンセプトを掲げ、「ラブ」と銘打ったキャンペーンを行っています。

――利用者層の幅が急速に広がったことでアフターサービスも変化しましたか?

 お客さまと直接関わっていく部分で、変革を迫られています。従来からのスバリストは、性能がいいから乗っているという人が多く、例えばディーラーのショールームが少しぐらい汚くても、必要な部品がすぐに取り寄せられなくても、「スバルだから仕方がない」と、ある意味で特別視されて扱われる傾向がありました。ディーラーも同様にスバルが好きで販売をしてくださっているケースが多くて、特別視される事に慣れている部分があったわけです。

 より広い層のお客さまのニーズに応え、性能が良く、安全性も高い商品を作っても、例えば他の日系自動車メーカーに比べ、購入後のサービスが悪いとか、不具合が発生したときの対応が遅いとか、昔ながらのお客さまを相手にする感覚でいると、成長を止める可能性があると社内でも非常に問題になりました。アフターサービスの質の向上が、これからも伸びていくには不可欠であると議論され、今に至ります。

――具体的にどんな取り組みをされているのでしょうか?

 私自身が米国に来てから取り組んできたことは、現場のサービスの質を向上させるために、その指導を行う人材を増やすこと、そしてその人材を教育するプログラムを作ることです。例えば、お客さまが販売店に車を修理に持ってきたときに、サービスアドバイザーが話を聞き、必要な修理の説明をします。説明をきちんとするために、さらには安全にご利用いただくために、オイル交換の時期や定期点検時期までアドバイスできるサービスアドバイザーを育てることもこれからの課題です。

 修理自体に関しても「フィックス・イット・ライト」、つまり一発修理で、すぐにお客さまに車をお返しできるようにするためには、メカニックの技術力を上げる必要があります。

――販売会社であるスバル・オブ・アメリカがきちんと、商品が良い上に安全性も高いことを説明して販売台数を伸ばし、さらに商品以外の部分の質を向上させた、両輪の働きと言えますね。

 さらにこれまでレガシーとアウトバックのみを生産してきたSIA(スバル・オブ・インディアナ・オートモーティブ)が、今年から加えてインプレッサの生産を、しかも3月に発表した「グローバルプラットフォーム」を使って始めます。生産台数を増やし、需要に対応していくために、日本以外の生産力を上げていくのが狙いですが、全く新しい試みです。

 それに伴って、日本でしか作っていなかった車種を米国で、しかも新開発部品を使って作るとなると部品の供給も複雑になります。当然、生産ラインへの、そしてアフターサービスへの供給も共に重要になってきます。今年は円滑に供給できるしくみ作りに注力していきます。

 私自身はアフターサービス、部品供給の部門で長く働いていますが、一つ分かっているのは、この分野は絶対に終わりはないということです。

米国でも人気のインプレッサ。次期モデルからは新開発の「グローバルプラットフォーム」を使って、米国でも生産が始まる予定

角 信一郎 Shinichiro Sumi

中央大学法学部卒業後、富士重工業株式会社入社。産業機器・海外営業部門、部品用品部門などを経て、スバル部品用品本部部品企画部企画課長。スバル・ヨーロッパでディレクター兼シニアジェネラルマネジャー、スバル・サービス部門で企画・海外担当部長を務めた後、2014年から米国富士重工業社長。

1分動画


利用規約に同意します