2017/06/30発行 ジャピオン6号掲載記事


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今も色濃く残る「パパ」の姿


4ヘミングウェイの居所。1931年購入。現在は記念館5ヘミングウェイが愛した猫の子孫。よく見ると6本指だ6灯台から見たキーウェストの街並み7書斎で猫と戯れるヘミングウェイ?ならぬゴンザレス館長8作家が愛用したタイプライター。名作はここで生まれた9キーウェストに来たら一度は試したい豪快な海釣り10ヒッグスビーチから眺める夕日は絶景

 キーウェストで忘れてはならないのが文豪アーネスト・ヘミングウェイの居所。

 灯台博物館の向かいにある。第一次大戦他に従軍後、「日はまた昇る」を発表して名声を確立したヘミングウェイは、1928年に執筆の拠点をパリからキーウェストに移した。

 彼が約12年間暮らした家は、大事に保存され見学できる。離れの書斎には作家が愛用したタイプライターをはじめ、調度品や世界中から持ち帰った思い入れの品々が、当時のままに並ぶ。

「コンニチワ!オゲンキデスカ?」

 突然、日本語で話し掛けてきた館長のデイブ・ゴンザレスさんは、「パパ」の愛称で呼ばれたヘミングウェイばりの立派な顎ひげの持ち主。軍隊で横須賀に駐留していた経験があるそうだ。

 「キーウェスト時代のパパは、この書斎で『キリマンジャロの雪』『持つと持たぬと』『誰がために鐘は鳴る』などを執筆しました。作家人生の最盛期でした。『パパ』という愛称はパリで結婚した2番目の妻ポーリーンがつけたものです。でも、ここに移住して、子宝にも恵まれ、文字通り「パパ」になったにもかかわらずポーリーンとの関係はどんどん悪化。浪費家の彼女が無断で2万ドルもかけて作ったのが庭のプールです」

 プールサイドには、パパが埋め込んだ1セント玉がいまも残る。「全財産使い果たした。私に残っているのは1セントだけ」という大作家ならではの皮肉なメッセージだ。

 戦争、釣り、酒、狩猟、美女など、一見して男臭いテーマや生き様で知られているヘミングウェイだが、無類の猫好きだったことも有名な話だ。

 今も邸内や熱帯植物が繁る庭園の至る所に猫がいる。彼らは作家が知り合いの船長から譲り受けた2匹の猫の子孫で、その数50匹超。よく見ると、どの子も足の指が6本。近親交配の結果らしいが、ヘミングウェイ自身は6本指を「幸運の印」と喜び、たいそうかわいがったそうだ。

「人間は負けるようには作られていない」彼(老人)は言った。「打ち砕かれることはあっても負けることはないんだ」

 後年の名著「老人と海」には、こんな強気の一文があるが、隠しきれない男の弱さが、6本指への溺愛になっていたのかもしれない。

 もう一つ、作家が愛したのが海釣りである。最初は怪力の古代魚ターポンを海岸で釣るのに夢中になっていたが、やがてマカジキのトローリングに魅せられたヘミングウェイは、1934年にパワーボート「ピラー号」を建造。

 キーウェストからバハマ諸島周辺まで繰り出し、200キロ近い大魚と格闘する豪快な釣りに興じていた。その経験が名著の誕生に貢献したのはいうまでもない。

 現在もスポーツフィッシングはキーウェスト最大のレジャー。外洋ではマカジキ、バショウカジキ、カマスサワラ、マグロなど。サンゴ礁内なら、ハタ、スギ、サメなど、いずれも大物がうようよいるそうだ。道具がなくても団体釣りボートなら半日60ドルぐらいで手軽に参加できる。気ままな旅で漁果など期待してはいけない。パパだって言っている。

 「釣れない時は、魚が考える時間を与えてくれたと思えばいい」

 海釣りでいい汗をかいたら、ヘミングウェイがひいきにしていた酒場に繰り出してはどうだろう。定番は目抜き通りのデュバルストリートにある「スロッピー・ジョーズ」。毎年7月には「パパそっくりさんコンテスト」を開催する有名店で、いつも観光客でにぎわっている。

 実際に生前パパが通ったオリジナルの店舗は数軒下ったところにあって、現在は「キャプテン・トニーズ・サルーン」という。パパと同じ止まり木で静かに献杯したい方は、こちらがおすすめ。もちろん、ドリンクは文豪考案の名作フローズン・ダイキリ。「ラムはダブルで」とあえて確認するのが通なのだそうだ。

 体の火照りが引いたところで、ビーチまで軽く散歩すれば、水平線に落ちるカリブの夕日が、眠っていた闘争心を掻き立てる。最果ての地キーウェストは、パパが抱いたロマンのにおいがした。

キーウェストの名物

Cuban Cuisine

90マイルを隔てたキューバーからの影響で、キーウェストの代表的な料理は、肉や魚を米と豆の煮物と一緒に盛り付けたキューバ風になった


Frozen Daiquiri

ラムとライムジュース、砂糖を入れたカクテル、ダイキリを、クラッシュドアイスをミキサーでシャーベット状にしたものに注いだもの。ヘミングウェイは、ダブルのラムにグレープフルーツジュースを注ぎ、砂糖なしで楽しんだそうだ


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