2017/09/29発行 2017 FALL掲載記事

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 「スタートアップ」という言葉は、日本でも浸透しつつあるが、いまだに「ベンチャー」と混同している人も多いのではないか、と話すのは、ニューヨークでスタートアップ企業同士の交流の機会創出や将来の起業を考えている人の支援を行っている、ライジングスタートアップス代表、奥西正人さん。

 「革新的なアイデアを基に起業する、という意味では、日本語で言う『ベンチャー』は、英語でのスタートアップと同義になります。ただし、現代の文脈において『スタートアップ』と言う際、多くの日本人がイメージする『起業』とは少し違いがあるのではないかと思います」

 近年におけるスタートアップは、「新しいビジネスモデルを開発」し「短時間での急激な成長とイグジットを目標」とした「一時的な集合体」であると定義される。

 その考えの基となっているのが、2008年に出版された、「リーン・スタートアップ(Lean Startup)」の中で、著者のエリック・リース氏が提唱した、「ムダのない起業プロセスでイノベーションを生み出す」手法。市場において価値のないサービスやプロダクトの開発にかかる時間や労力、資金、情熱の浪費をなくす効率性を重視した起業の方法論だ。最小限のコストで、かつ短期間で的確に仮説の構築と検証を行い、ニーズを探り当てるというもの。

 「現代で革新的だったシリコンバレーでの起業ビジネスモデルが、目に見えるようになってきましたが、それを体系化して言葉で表現できる人がいなかった。そこに『リーン・スタートアップ』という方法論、考え方が現れ、うまくハマりました」と奥西さんは解説する。

 既存の会社組織を中心にしたビジネスカルチャーが支配した時代には、起業を考えていても、やり方が分からない、リソースがない、高額の資金がかかると、いろいろな理由で、起業することが一般的ではなくなっていた。そんな状況のただ中にテクノロジー革新が起こり、高かった障壁を取り払った。

 時を同じくして、パソコンやサーバーなど、インフラにかかるコストが下がり、無料かつ有効なソフトウェアが増えたことも起業への追い風となる。また、SNSの普及で、サービスや商品の宣伝が容易になり、それまで最初の客を見つけるまでにかかっていたコストも格段に下がる。さらに、それまでは投資家からの融資やローンに頼らざるを得なかった資金獲得も、エンジェル投資家やクラウドファンディングなど、オプションが増えた。

奥西正人(まさひと)さん
RISING STARTUPS代表

2015年にミートアップ「JAPAN NYC Startup」を立ち上げ、翌年、「RISINGSTARTUPS」設立。ニューヨークのスタートアップ企業の交流を目的とした「IFCONFERENCE」、起業を目指す人を支援する「IFWorkshop」を開催。
www.risingstartups.com


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用語解説

スタートアップス

近年においては、新しいビジネスモデルやイノベーションをもとに起業し、短時間での成長イグジットを目的としている一時的な組織として使われる。各ステージとしては、シード(準備期間)、アーリー(起業直後)、エクスパンション(発展期)、グロウス(成長期)、イグジットなどがある。

アクセラレータープログラム

スタートアップ企業が、数週間から数カ月まで一定の期間に、主催者の企業やメンターグループと協力し、ビジネスの構築、その過程で生じる問題に対処するためのプログラム。

イグジット

スタートアップ企業が目指す、資金の回収方法。株式公開による株式売却やバイアウトによる株式売却など。

インキュベーター

初期段階にあるスタートアップ企業、起業家を支援する機関。

エンジェル

創業間もないスタートアップや起業家に対し、資金を提供する個人投資家

ユニコーン

企業価値が10億ドル以上の非上場のスタートアップ企業

NYスタートアップの特徴

 「ニューヨークでスタートアップが盛んになったのは、過去10年ほどで、わりと最近という印象です」と奥西さん。

 シリコンバレーを起点にリーン・スタートアップの方法論が広がり、各都市にもその波は訪れたが、今もテクノロジー系スタートアップならば、やはり本場は西海岸、という考え方は根強いという。そこには支援する機関、投資家、さらにエンジニアも多く、受け皿としての環境が整っているからだ。ならば、後発のニューヨークのスタートアップにはどのような特徴があるのか。

 起業のキーワードの一つに、「What is the problem you are trying to solve?」というものがある。つまりは、企業や個人が抱えている問題を解決することが出発点となるわけだが、それゆえ、「その地にある産業と、その補助となるイノベーションは親和性が高い」と奥西さん。

 ニューヨークには、金融、メディア、不動産などの大産業の本社がある。そこで起こる問題の解決に求められるのは、新しいテクノロジーだけでなく、既存のビジネスモデルのディスラプション(破壊)だ。「破壊」を起こすには、エンジニアに限らず、そのビジネスをよく理解する人材も必要となってくる。

 コワーキングスペースを提供している「ウィーワーク」などは、既存のビジネスモデルを覆した典型だという。

 「不動産という大産業、かつ当地の不動産事情の問題を解決するために、新しい価値を作り出し、そこにデザインの要素も加わっているのが、典型的なビジネスモデルのディスラプション(破壊)だと思います」

 既にあるもの、みんなが当たり前だと思っているものを急速に覆す、それが現代のスタートアップの姿。さらに、その土地にある産業と結び付き、特化していくのが、スタートアップの進化系。その進化が今まさに、ニューヨークで起こっている。


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